理想の会社とは?
人事制度は会社を知る最強の指標
現役人事部員が本気で考える、社員にとっての理想の会社を探求します!
会社の仕組み

「会社を辞めたい」と考えている社員への人事部からのメッセージ

会社を辞めたいと思ったら

会社員であれば、誰でも「会社を辞めたい」と願うことがあるかと思います。

例えば、会社では理不尽なことや不合理、不平等と感じる場面に出くわすことが誰しも経験するものです。また、仕事が徒労に終わるとき、頑張っても空振りするときなどもあります。

そんなとき、心の中で「会社を辞めたい」と思わず願ってしまいます。

会社を辞めたい人に対して、「辞めたい気持ちがあれば、辞めなさい」との論調の書き物がありますが、まずは冷静になることが重要です。

現代社会において「会社」とは社会保障の機能を有しています。

健康保険や介護保険、厚生年金、雇用保険など、現実の生活において社会保障はなくてはならないものとなります

つまり、「会社を辞めること」は、現代社会において生活を左右するリスクを負うことと同義と思って良いでしょう。

それを会社員は理性で理解しているからこそ、現状に苦悩して、理不尽に目を瞑り、ただただ会社を辞めることを願うのだと思います。

しかし、人事部にいて、幾人もの自己都合退職者を見てきましたが、退職理由を確認する限りでは、「本人の思い込み」によるものが意外と多いことに気づきます。

会社を辞めたいと思ったときに、少し立ち止まって冷静に考えるために、また、自分にとって損な辞め方にならないために、よくある勘違いをまとめてみました。

社内の評価・評判に関して

人事部で退職理由をヒアリングすると、本人の思い込みで退職するケースがあります。

上司からバツ印を付けられており評判が悪い

この会社では昇進できない。

 

自分はミスが多く、周囲からダメな奴として扱われている

この会社では居場所がない。

 

人事考課(評価)が標準未満であり、同僚や同期と比べて劣っていると評価されている

この会社は自分には合わない。

 

昇進(出世)が同じ年代よりも遅れた

この会社で自分は劣っている。

この4つのケースでは、吹き出しは事実であった場合でも、後文(“…”以降)に結論付けることは論理が飛躍しており、本人の思い込みとなります

まず、会社の人事の仕組み上では、20代や30代の評価や評判が将来的も継続し、加えて、キャリアに影響を及ぼす可能性は極めて稀だと考えていいでしょう。

余程の悪質な懲戒行為を行った等は別ですが、「ミスが多い」や「仕事が遅い」、「コミュニケーションがとれない」程度の評判であれば、長期的なキャリアへの影響はありません。

その理由として幾つか要因を述べたいと思いますが、まずは先のケースに対する人事部の見解は次のとおりとなります。

上司からバツ印を付けられており評判が悪い
評判は継続せずに、上司が変われば評判も変わります。
自分はミスが多く、周囲からダメな奴として扱われている
部署や業務が変わると開花する人は多くおり、今の仕事でその人を評価することはありません。
人事考課(評価)が標準以下であり、同僚や同期と比べて劣っていると評価されている
人事考課の運用上、全社員に標準以上の評価を付けることはできません。不運にも所属部署の相対分布から経験年数の浅い人材や理由をつけ易い人材に下位評価をやむを得ず付けることはあります。気にせずに。
昇進(出世)が同じ年代よりも遅れた
昇進制度にもよりますが、全員を一律で昇進されることは現実問題として難しいと思います。タイミングや相対分布の関係上で遅れてしまう社員は一定数発生します。

会社の仕組み上、人事考課(評価)や昇進・異動の仕組みについては制度の運用上、必ず公平とは言えず、評判を気にしてもしょうがないところがあります

つまり、社内において一過性の評判は自分の人生に影響を与える程度は極めて軽微と言って良いあり、それ以上にタイミング、要は運によって左右されるものとなります。

会社を辞める選択肢自体の是非はともかく、社内の評価・評判を理由として、拙速に会社を辞める判断をすることはないでしょう。

ただし、無論ですが仕事をしない、中長期的に経験しても仕事が出来ない、など上位等級を担うことができない姿勢や能力の場合は、その限りではありません。

会社員生活は今後、ますます長くなり70歳までの雇用も見えてきた現代社会において、自分の軸を保って他者からの影響を最小限に留め、着実にキャリア形成を目指してくことが大切なのです。

人間関係に関して

「会社は選べるが、上司と同僚は選べない」とは良く言いますが、正にそのとおりかと思います。

正直、誰しもが「人間関係で悩むのは労力の無駄」と理解しつつも、悩まざるを得ないのが人間関係です。

でも、この問題は今の会社に限ったことではなく、例え転職したとしても、また起業したとしても、同じ問題が付いて回ります。

解がない問いではありますが、会社員の退職理由に「人間関係」をあげることも多く、会社における人間関係への対処法を3つ上げてみたいと思います

対処1.選択肢を広げる

小学生や中学生の頃、学校以外の世界、例えば塾などの習い事があれば、学校で嫌なことがあってもスルーすることができた経験がある方は少なくなかったはずです。

その点で、人間関係でスルーすることができない人の特徴として、会社以外の社会的繋がりが少ないことがあげられます。

一方、見方を変えて、会社から見れば、実際には、プライベートを犠牲にしても仕事に専念する人を評価する傾向にあるのは事実です。それが能力ではなく、意識の問題であったとしても、会社への帰属意識が高い人材は仕事上で重宝するため、評価の対象になってしまいます。

事実、人事制度でも、各種制度には意味付をしますが、会社では休暇・休日を「仕事に専念できるように心身ともに休養すること」と謳っている会社も未だに多くあります。(↑自分の会社の就業規則を確認することをお勧めします)

つまり、会社を中心の生き方をしている人は、ある意味で会社が社員に期待するあるべき社員像を体現した人と言ってよいでしょう。その意味で、理想の会社員なのかも知れません。

しかし、現代社会において、1人の社員を会社が65歳~70歳まで雇用を継続させ、「生活面では心配ないから仕事に専念するように」と言える時代は過去の話となりました。

つまり、自分を追い詰めて会社だけの世界に浸かり、会社の人間関係に一喜一憂することはナンセンスであり、会社の期待にはプライベートを保てる程度に応え、社員個人でも積極的に会社以外の世界を持ち、視野を広げていくことは重要になっているのです。

人間関係での悩みは主観であることが多く、スルーできるようになれば影響は間違いなく軽減されるでしょう。

その方法論の一つとして、他の世界を持つことが選択肢として上がります。

その場合、次の2点の視点で物事を考えると良いかと思います。

  1.  趣味の世界を持つ
  2.  実利の世界を持つ

「①趣味の世界を持つ」については、自分の趣味を持ち、その世界でコミュニティを形成することが上げられます。

例えば、キャンプやスポーツ、地域貢献などで世界を持つと、何れも会社や家族以外の人とのコミュニティが形成されます。

そこで出会った人たちについては、会社と異なった“競争”や“利害”、“嫉妬”などのワードとは関係がない人間関係を形成することができます

 

「②実利の世界を持つ」は、やはり経済的な柱を会社以外で持つことで、心のゆとりを得る方法となります。経済的自立と人間関係は決して無関係ではありません

ある有名人が「お金のゆとりが心を丸くしてくれた」と言っていましたが、正にそのとおりかと思います。

人間関係も会社との関係も、相手に依存することが思考の自由を奪い、精神的な視野狭窄に陥ります。

経済的自立はできないまでも、少ない金額でも会社以外の収入があれば、会社への依存度は金額以上に軽減されるはずです

対処2.マインドチェンジ

会社の人間関係を軽視することは避けるべきですが、誤解を恐れずに言えば、会社の人間関係は最低限のコミュニケーションに留める程度とする必要があります。

会社という組織は、評価による処遇差を前提としたルール(制度)で成り立っており、その存在目的(収入)に優劣(評価)をつける土台で人間関係が構築されている以上、大なり小なり嫉妬や功名心などの相手より優位性を求める欲が生じる集団で形成されています

そのような環境で居心地の良い人間関係は望むべくもなく、ある程度、割り切った関係が必要です。

特に”繊細さん”と言われる、他者の感情に過敏に影響を受ける人は、割り切った思考は難しいと思いますが、熱心に仕事をしつつも、コミュニケーションの相手を極力限定して、必要以上の自分の情報は相手に与えずに勤務するだけでも、だいぶ人間関係が変わっていきます。

なお、自分のプライベート情報を職場の人に言う行為は、経験年数が浅い人を中心に散見されますが、人事部として見ている限り、トラブルの種を蒔いている以外の何ものでもありません。

優勝劣敗の行動特性がある組織において、自分を切り売りしても周囲の評価が得られないことは自明の理であり、それどころか会社における人間関係のトラブルのキッカケに繋がる要因となります。

対処3.人事を上手く使う

人間関係で悩んでいる人の話しをよくよく聞くと、ハラスメントに該当する発言をされている場合があります。

例えば、「経歴(学歴等)をネタにされる」「話している最中に何度も舌打ちされる」「衆人環視の中で馬鹿にされる」「無視をする(人間関係の切り離し)」ことは全て、ハラスメントに該当します。

ただし、程度の差があることから、懲戒に直結するケースは限定されますが、まずはハラスメントに該当することを認識しましょう

その上で、必要な対応は記録”と“通報”となります。

会社によって異なりますが、人事や法務、または総務などのハラスメント担当へ連絡するのが良いでしょう。

「誰かが見ている」、「人事部が知っているはず」と思う方も中にはいますが、組織が大きい程、または人事部の規模が小さい程、人事部が率先して対応することは期待薄です。

通報した場合でも、不利益に扱われることはなく、万一、不利益に扱われた場合はその程度の労務管理機能の会社と割り切って、外部機関(労働局)へ通報しましょう。その上で、転職しても良いかと思います。

厚生労働省:総合労働相談コーナー

以上より、少なくとも、会社の経営が傾いており将来性がない会社や、明らかに不当な労働環境(ブラック企業)でない限りは、勢い余った辞め方は避けた方がよいでしょう

それでも辞めたい場合と思った場合は、先を確保した上で行動してくださいね。

ABOUT ME
かおる
現役の人事部員として、会社の仕組みについて人事制度を通じて分かりやすく説明したいと思います。人生100年時代において、70歳まで働く生涯現役の時代が迎えつつあることを感じています。時代の変革を迎える中で、人事部の仕事から生きる術を探求していきます。